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FOOD

うどんとパスタが奇跡のコラボ! 地元産小麦のパスタ〜ジターリア ダ フィリッポ後編〜|池田浩明のイタリアパンラボ【第8回】

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【第7回】東京で地産地消!? ナポリも認めたピッツェリアの武蔵野ピッツァ〜ジターリア ダ フィリッポ前編〜

ピッツァの世界チャンピオンがパスタに挑戦

 

東京都練馬区は石神井公園のピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ。

世界大会でも技術部門最優秀賞の受賞経験があるワールドレベルのピッツァ職人、フィリッポこと岩澤正和さんの店だ。

 

数ヶ月前、その岩澤さんから突然電話があった。

 

「近くで小麦畑知りませんか?」

(ここは説明が必要だろう。私はパンマニアが高じて全国の小麦生産者を訪ね歩き、ついには新麦コレクションというNPO(mugikore.net)も発足、少しはその道に通じているのだ)

「川越にありますけど、なにか?」

「紹介してください!」

 

 

 

川越市と坂戸市にまたがる原農場は、東京近郊とは思えないほど見渡す限りの小麦の波を見ることができる場所だ。石神井公園から川越なら電車一本で行けるけど、いったいどうするんだろう?

 

1週間後にまた電話がかかってきた。

 

「スタッフみんなで行ってきました! いいところですねー。今年とれた新麦でパスタを作ることに決めました」

「えっ! まじですか!?」

「できたら食べに来てくださいね!」

 

埼玉県産小麦ハナマンテンを、ピッツァの世界チャンピオンがパスタにする!

しかも、とれたての「新麦」の状態で。一体どんなパスタになるんだろうか?胸が高鳴るうれしい事態だが、心配もあった。

 

そもそも、おいしいパスタってデュラム小麦じゃないとできないと言われてきたのではなかったか?岩澤さん、大丈夫なのか?

 

 

 

小麦は無事収穫され、パスタが完成。

 

ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポに行くと、岩澤さんの手には、でっかい丸々としたキャベツ。

 

 

 

「練馬産キャベツで、キャベツとアンチョビのパスタを作ろうと思って。この『とくみつ』ってキャベツ、すごくおいしいんですよ!ちょうどボジョレ・ヌーヴォーの季節に出まわるんです」

 

埼玉の小麦に練馬のキャベツ。

 

東京周辺の産物で作る「武蔵野パスタ」が味わえるということか!

 

 

 

うどんでもパスタでもないハイブリッド

 

いよいよ武蔵野パスタと対面。

 

ワインやらアンチョビやらにんにくやらオリーブオイルやら、旨味軍団の汁にまみれたキャベツがてらてらと光ってのっている。

 

むむむむむ!

 

肉欲を刺激する旨味と野菜のさわやかさ。2つのの風味が完全なバランスで綱引きをしあっていた!

 

埼玉県産小麦を使ったパスタの味わいはどうか?

 

未知なる食感の快楽がここにあった!

 

アルデンテのこりっと感。とともにパスタが崩壊すると、うどんに似たもちっと感。その刹那、小麦がとろけ、国産らしいすっきりとしてやさしい風味を流れ出させて、前述した旨味や野菜と合流。完璧な味わいトライアングルが結成されるのだ!

 

うどんでもなし、デュラムセモリナのパスタでもなし。その両方を時間差で併せ持ったハイブリッドだった!!どうやってこんな奇跡のようなパスタが生まれたのか?

 

埼玉県産ハナマンテンに、国産では珍しいパスタ用の小麦である、北海道留萌だけで作られるルルロッソをブレンド。国産小麦らしいもちっと感とパスタらしいこりこり感が両方味わえるのはそのためだ。

 

これを食べたら、「国産小麦のパスタもありだな!」と多くの人が思ってくれることだろう。

 

「いままで食べたことない、日本人の好きなパスタになりました。いろんなイタリア料理人に持ってったけど、みんな『おいしいね』と言ってくれる。イタリアの味に近づけよう、勝とうじゃなくて、日本の小麦のポテンシャルを活かしたオリジナル。イタリアと戦わないパスタです。寝かせてない新麦なので、小麦の香りは少ないけど、新麦ならではのフレッシュ感や甘み、旨味を楽しめる。こんなにおいしいものが自分の作ったものでできるんだと、日本の生産者に自信を持ってもらいたい」

 

岩澤さんの目利きの力はすごくて、練馬産キャベツも、キャベツ特有の嫌味がなく、ひたすらさわやか。私は石神井公園に住んでいたことがあるが、こんなおいしいものが練馬にあるなんて、目から鱗である。

 

 

 

イタリアは地産地消のお手本

 

「練馬大根でミネストローネも作ってますし、練馬にオリーブだってある。大泉学園の東京ワイナリーでスプマンテ(スパークリングワイン)を作ったあとの搾りかすを使って、スキャッチャータ(平べったい形のぶどうパン)を作ったり。アピールできるところが本当はたくさんあるのに、いまは情報がありすぎて、地元のものが選ばれてない。練馬区の畑はいま半分しか利用されてないんです。せっかく畑があるんだから、僕らが使ってれば、もっと練馬の農産物を増やせる」

 

地産地消やスローフードはイタリアの伝統。地元の食材でオンリーワンのものを作り出すことで世界中から観光客を呼びこんでいる。地産地消は都市で農業を活発にさせ、地域経済を活性化し、人々の絆も作り出すだろう。

 

ひとたび災害が起きればストックのパスタ2000食は避難食料として、食べ物を求める地域の人たちを助けることになるだろう。

 

「ぼくらの課題は地域で(お金や人や食材を)循環させること。イタリアがお手本です」

 

【これまでの連載はこちら】

 


 

ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ

東京都練馬区石神井町2-13-5 グリーンハイム 1F

TEL. 050-5590-4514(12:00~13:00以外におかけください)

木曜休(木曜が祝日の場合水曜休。その他不定休)

https://www.facebook.com/PizzeriaGtaliaDaFilippo

 

 

PROFILE
池田浩明 _ Hiroaki Ikeda

パンラボ主宰、ブレッドギーク(パンおたく)。東においしいパン屋あると聞けば行ってパンを食べ、西にすごいパン職人がいると聞けばその声に耳を傾け、南に偉大な小麦農家ありと聞けば、土を掘り返し、小麦をむしゃむしゃ頬張る。著書『サッカロマイセスセレビシエ』、『食パンをもっとおいしくする99の魔法』、『空想サンドウィッチュリー』、『パンの漫画2 さすらいのクロックムッシュ氏』、編著に『パンの雑誌』(すべてガイドワークス刊)、『おかしなパン』(誠文堂新光社)、『日本全国 このパンがすごい!』(朝日新聞出版)、『パンソロジー』(平凡社)。

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