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FOOD

東京で地産地消!? ナポリも認めたピッツェリアの武蔵野ピッツァ〜ジターリア ダ フィリッポ前編〜|池田浩明のイタリアパンラボ【第7回】

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ピッツァというよりお好み焼き!?

 

東京都練馬区は石神井公園のピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ。

 

ナポリピッツァの世界大会でも受賞経験があるワールドレベルのピッツァ職人、フィリッポこと岩澤正和さんの店だ。

 

20代でナポリピッツァに出会い、イタリアに渡って、その技術と精神を学び取った。

 

 

 

ナポリさながらの石窯でピッツァを焼くところを見せてもらう。

 

円形に広げた生地に、ふりかけているものはパルミジャーノチーズ、かと思いきや

「かつおぶしです」

 

えーっ! ナポリピッツァにかつおぶし?

 

 

 

さらに、しらす、きのこをのせ、この葉っぱみたいなものはバジルではなくて…

「かぶの葉っぱです」

 

ナポリピッツァというより、お好み焼きかお焼きではないか!

 

 

オリーブオイルをかけたら窯の中へ。

 

ものの数分でピッツァが焼きあがる。

 

さすが世界チャンピオン、あまりの手際にシャッターが追いつかなかった!

 

 

 

さて、目の前のピッツアに勢いよく噛みついたところ、待っていた食感は、ふにゃちゅる。

 

噛んだ瞬間は「ふにゃっ」、かと思えば次の瞬間にはもう「ちゅるー」と溶けてなくなっている。

 

なんて食べやすいピッツア!

 

かぶの葉っぱとかつおぶし。日本人の舌になじんだ組み合わせに、がつがつ衝動が止まらない!

 

いっしょに吸い込むおこげの風味。焼きおにぎりの記憶がオーバーラップする。

 

そして、耳が珠玉。たやすく歯が入って、もちっとして、つるーっと溶けていく、このやわらかさ。

 

ナポリ経由練馬着のまったく新しい食べ物が爆誕している!

 

 

 

あえて武蔵野ピッツァと呼ぶこだわり

 

岩澤さんは自分の店で出すピッツァをナポリピッツァと呼ばず、「武蔵野ピッツァ」と呼ぶ。

 

ナポリピッツァに心酔するならば、イタリアの小麦粉で本場を再現するのが普通のように思われるが、使うのは北海道の小麦。

 

世界大会にもイタリアまで国産小麦をもって出かけ、見事準優勝を果たした。

イタリア人に国産小麦のおいしさを認めさせたのだ。

 

そんなにまで、岩澤さんが日本の小麦を愛するのはなぜなのか。

 

岩澤さんが料理修業に出かけたヨーロッパでパンばかり食べていたら胃もたれしてしまったという。ところが、国産小麦で作ったピッツァならそんなことはない。

 

その理由を岩澤さんは日本人とヨーロッパ人の「消化酵素のちがい」に求める。何千年も昔から食べてきたその土地に育ったものが、人間にとっていちばん消化がいいのかもしれない。

 

 

 

そういえばイタリア人はでっかいピッツァをむしゃむしゃ食べているが、それも欧米の硬質小麦が彼らの体に合うせいだと聞けば合点がいく。

 

ひるがえって、国産小麦で作られたこの武蔵野ピッツァ、まるで飲み物みたいな勢いで、2枚でも3枚でもぺろぺろいけそうではないか!

 

イタリア人がナポリピッツァを食べるときの「ぺろぺろいける感」を日本人レベルで再現しようと思ったら、国産小麦のほうが近いのではないか。

 

ナポリピッツァを真に愛するなら、その土地の材料でピッツァ作るのがいちばん! という岩澤さんの考えがわかったぞ!!

 

国産小麦のお米に似た味わいだから、日本の食材とも相性がいい。

 

「日本人の食べるナポリピッツァだから、『武蔵野ピッツァ』にしちゃいました。

冬にバジルがないんだったら、カブの葉っぱでいいんです。チーズ以外、ナポリのものは使ってないけど(オプションで釧路産モッツアレラあり)、技術や調理法は使わせてもらっています。栄養面でも理にかなっていて、一食分の栄養素が一枚でぜんぶとれるように計算しています」

 

東京で食べる価値のあるピッツァを

 

国産自給率がわずか約40%というこの国の行く末を、岩澤さんは憂いている。

 

「ナポリに行くと食べ物は地元のものしかない。隣の店に行っても同じ野菜でピッツァ作ってます。地元のものを愛してる。日本では地元のものを売ってる店がほとんどない。こんな国ないですよ。いまは便利すぎちゃって、年がら年中同じ野菜がそろっちゃう」

 

ピッツァを食べにいけば、一年中フレッシュなバジルがのっていることを、なんの疑問もなく受け入れていた。だけど、そのために畑では環境に負荷をかかっているかもしれないし、旬の野菜を食べたほうが心にも体にもおいしい。

 

「本場のナポリピッツァ」を日本で食べることで、私たちは大事なものを見失っていないだろうか?

 

「ナポリピッツアを食べるならナポリに行くのがおいしい。この練馬で食べるなら、ここに来る価値があるナポリピッツァ作らないと、お客さんに来てもらえないですよね。そう考えたら、日本の小麦の個性を楽しんでもらうのが自然なんじゃないかな」

 

2020年に開かれるオリンピック・パラリンピック東京大会。東京の食材で作った武蔵野ピッツァは世界から来た人に最高の「おもてなし」になりそうだ。でも、東京においしい農作物なんてあるのか?

 

次回は、驚きの材料で作る武蔵野パスタについて。

 

後編は1月28日[日]公開予定

 

【これまでの連載はこちら】

 


 

ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ

東京都練馬区石神井町2-13-5 グリーンハイム 1F

TEL. 050-5590-4514(12:00~13:00以外におかけください)

木曜休(木曜が祝日の場合水曜休。その他不定休)

https://www.facebook.com/PizzeriaGtaliaDaFilippo

 

 

 

 

 

 

PROFILE
池田浩明 _ Hiroaki Ikeda

パンラボ主宰、ブレッドギーク(パンおたく)。東においしいパン屋あると聞けば行ってパンを食べ、西にすごいパン職人がいると聞けばその声に耳を傾け、南に偉大な小麦農家ありと聞けば、土を掘り返し、小麦をむしゃむしゃ頬張る。著書『サッカロマイセスセレビシエ』、『食パンをもっとおいしくする99の魔法』、『空想サンドウィッチュリー』、『パンの漫画2 さすらいのクロックムッシュ氏』、編著に『パンの雑誌』(すべてガイドワークス刊)、『おかしなパン』(誠文堂新光社)、『日本全国 このパンがすごい!』(朝日新聞出版)、『パンソロジー』(平凡社)。

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